サンクション 〜sanctions〜
著者:shauna


 まさかそんな・・・10万の私兵団が全滅なんて・・・・・
 
 息子のエリックが逮捕されるなんて・・・・・
 
 そんな馬鹿なことがあってたまるか!?
 
 王宮の中のある場所で僅かな私兵団に護られながらロレーヌ候パイトーンは苦虫をかみつぶしたような顔で怯えていた。
 
 一体どうなっているんだ。
 
 どこでどう間違えたんだ。
 
 作戦は完璧だったはずなのに・・・・
 
 シルフィリアを手に入れ、彼女の持つ伝説のスペリオルを手に入れ、やがて世界を手中に収める。
 
 何がいけなかったんだ!?
 
 そう考えるパイトーンの足取りは自然と重い。
 
 とにかくまた始めなければ。
 
 自分が捕まらない内はまだまだやり直しが効く。
 
 今はどうにか城の外へ抜けだすことだけを考えなければ・・。
 
 大丈夫。ここからなら簡単に城の外へ抜け出せるはずだ。
 
 なにしろここは・・・・・
 
 そう思った瞬間だった。

 遠方からまるで爆発音のようなとてつもなく大きい風を切る音が聞こえて来たのは・・・・・
 そしてパイトーンの目に飛び込んで来たのは・・・・
 

 1本の巨大な矢だった。
 光で出来た純白の矢羽。
 
 それは自身の隣にいた近衛兵の足に命中し、近衛兵が一人、激痛に声を上げながらその場に倒れこんだ。

「何だ!?何が起こった!?」

何が起こったのかなど全くと言っていいほど分からない。
ただ、いきなり目の前の兵士の足が貫かれたのだ。
怖い・・とんでもなく怖い・・・

 「パ!パイトーン様!!」

近衛兵の一人が声を上げた。

「あ!明かりが!?」

消えて行く。ゆっくりとまるでこちらに近づいて来るように壁から白い光で床を照らす魔光石の光が・・・・・
その場所は完全に真っ暗になった。
そして・・・
その状況において複数の足音がこちらに向かって近づいてくる。
なんだ・・・何が起こっているのだ!?
足音は段々と近づいてくる。
そして目の前の曲がり角の向こうから僅かな光が漏れた。
そんな馬鹿な・・・
光っているのは長い杖の先端に付けられた槍状の十字架だった。
そしてその杖を持ちながらゆっくりと近づいてくる少女。
黒いショートジャケットと袴状のズボンを身に纏い、長い杖を持った金髪の少女。
通路自体が暗い為、口元までしか見えないが、その口元は確実に綻んでいる。うっすらと光るそれは獲物を仕留める時の肉食獣の目。蛇に睨まれた蛙という言葉をパイトーンは静かに実感した。

 「そんな馬鹿なと思っているでしょう?」

冷汗で濡れた背中を少女の綺麗な声が舐める。
自然と息が荒くなっていた。

「なぜなら、ここに入れる者なんてそうそういない。なぜならここは王族や一部貴族にしか知らされていないはずなのだから・・・」

なぜだ!?何故気付かれた!?

「それに聖蒼貴族の関連でここを警備しているのは現在あなたの兵士だけのはず・・。違いますか?ロレーヌ候・・・いや・・・パイトーン!」
なぜ・・・何故こちらの名を!?完璧な作戦だったはずなのに・・なぜ・・・・

「理由はいくつか。城下にあなたの兵士が武装して魔術祭に紛れ混んでいたから・・・。そして・・・・」
脇から姿を現したアリエスが静かに語る。

「思えば、舞踏会でもあなたの様子はおかしかった。異様にそわそわして・・それに、シルフィーがミーティアとお茶してる時に俺は城の剣士と剣の模擬試合をしてたんだが・・・多数の貴族が見守るなかで唯一その場に居なかったのがあなたとシャズールだけだった。シャズールは今フロートに出掛けている・・。となると・・・残るのは・・あなただけだ。」
思考が読まれている・・・

「それに、私が“刻の扉”を使って昨日の昼頃この城に来た時に地下に警備の兵士を異常なまでに配置しすぎていたからです・・。」

今さらだが、これこそがミーティアがあの時感じた違和感だった。
ハァ・・ハァ・・・
そして、シルフィリアの言葉はやがて核心へと迫る。

「そうですよね・・。ここにはあなた達一部の貴族と王族しか入れませんよね・・。」
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・

「だってここは・・・。」

シルフィリアが杖の柄で軽く地面を叩いた。
一瞬で通路の魔法石が一斉に点灯し、辺りを昼のように映し出す。
石造りの壁を・・・・
赤い絨毯の敷かれた床を・・・・
迷路のように入り組んだ道を・・・
そう・・ここは


「王族専用の脱出用通路なのですから・・・・」


シルフィリアが笑顔でパイトーンを見つめた。
同時にその場にいた全員の顔がはっきりする。
目の前にいたのはフルパーティーだった。
シルフィリアを筆頭にアリエス、カーリアン、ジュリオ、セレナ、ミーティア、そしてデュラハンまで・・・おまけに後ろには縄で縛られたエリックまでいるではないか!?

「王宮には通常の通路以外に攻め込まれた時に王族や貴族が脱出する為の秘密の通路が網目のように張り巡らされています。その絶対的な迷路の中を移動しながら作戦をエリックに伝える・・。中々におもしろい策を使いますね。これなら簡単には見つかりません。」

「なぜだ!?何故お前が生きている!?エリックに操られ、アリエスと共に戦死したはずだろ!?」

「そう。確かにあの時、アリエス様と私は戦って双方共に倒れました。でも・・・」

シルフィリアが目線を和らげ、まるで見下すような目つきで見つめた。


「それって本当に私でしたか?」


「何を言って・・・」

怪訝の表情をしていたパイトーンだが、流石にここまでにクーデターを起こした張本人だけである。シルフィリアの言葉の真意に気が付くのもものすごく速かった。

「まさか!?」

「そう・・その通りです。私の戦法は圧倒的な魔力と剣技で敵を圧倒するというモノ。その私がグランドスラム一つで戦うと思いますか?最初から全部仕組んでいたんですよ。あれは・・・」

シルフィリアの隣に立っていたジュリオが背中からグランドスラムを抜き放った。さらに手に持っていた折りたたんだ半透明の美しい布をアリエスに手渡す。

「フォルセティの羽衣。私が作成した宝具の中でも最高傑作のひとつです。そして、その効果は光の反射を調整することでどんな人物にも寸分違わぬ姿に変身できるというもの・・。あれは私に変身したジュリオですよ。そしてアリエス様が一人であたふたしている間に私はセイミーと協力して“刻の扉”を同調させる準備をしつつ、頃合いを見計らってアリエス様達を助けに行きました。
例え、心臓が停止していても10分間なら人間はまだ生きていますからその間に私は2人を“女神の息吹(ブレス・オブ・ゴッデス)”で全回復させ、最初の“刻の扉”との同調を発動。私達3人はすぐに王宮に戻ってカーリアンと共に作戦を立てた。後は知っての通りです。私達の力を最大限に使って敵を殲滅。残された黒幕を引っ張り出して成敗する。以上です。」

「じゃ!じゃあ!?俺がキスしたのって!?」

縛られたエリックが絶望的な瞳でシルフィリアを見つめる。
そのエリックに対しシルフィリアは無言で自分の右側を指差した。
そこには・・・

「も〜う!熱烈的で気持ちよかったわよ!!おまけにあんな情熱的に告白されたのって何十年ぶりかしら!?うれしかったわ〜!!」

ジュリエットちゃんが腰をクネクネさせながら頬を赤らめていた。

「そ・・・そんな・・・・」

もう絶望で体中の骨を抜かれたかのように地面に座り込むエリックを見てシルフィリアはクスクスと笑い声を上げた。


「例え策中であっても、私がアリエス様以外に唇や身体を許すと思います?」


そう言うと左隣にいたアリエスの顔が真っ赤に変色した。

「待て!今の話だとアリエスも騙したということか!?」

絶望しながら泣いているパイトーンにシルフィリアは更なる笑顔を見せた。

「敵を欺くにはまず味方からと申しますし、それにジュリオとの決闘で最後の一合を打ち合った時、アリエス様は私の作戦に気付かれましたので一切問題はありません。」

「ではもし、私達が死体を捨てずに持って帰ったらどうしていたんだ!?」
「持って帰ることは有り得ません。あなた達には捨てる以外の選択肢はありませんでした。なにしろ私達は聖蒼貴族。グロリアーナ家の当主は私には及ばないまでもアリエス様の剣術の師匠でいらっしゃいますし、その私兵団の数はゆうに数百万。そんなのを相手にすることになるのであれば、あなた達は迷わず私達の遺体を放棄すると考えたまでです。」

「しかし、現にそのオカマは町や人を破壊しまくっていたではないか!?それも演技だったというのか?」

「私に化けているジュリオが7つ質問を長々としている間に裏にあったグランドスラムを私特製の・・・触れると同時に血糊と強力な痺れ薬が飛び出すという刃の剣にすり替えておきましたから。その後、私は壊したモノを直しつつ市民の解毒をしていました。今頃は何もなかったかのようにみなさん普段通りの朝を迎えているはずですよ。
気が付きませんでした、クラブ・ナイトメアに私居たんですよ。」

「何だと!?」

「初めて見るスペリオルをあんなにすぐ鑑定できる鑑定士など居ると思いますか?」

「まさか・・・あの鑑定士か!?」

「大正解。」

「そんな・・・・・じゃあ、もしあの時・・・腕利きの魔道士を雇ってあの店でお前に不均衡音波!!(クラッシュ・ノイズ)をかけた時!もし、そのオカマを殺そうとしたらどうした!?」

「その時は、裏から私が出て、ジュリオ様にコーヒーを飲ませ、その後私とジュリオ様によりあの場であなた達を殲滅しました。」

「・・馬鹿な・・・・」

「それにハルランディア家の当主にもお願いして数十億リーラの修繕費を頂きましたからね。もうすっかり町も元通り。情報操作もお願いしておきましたから今頃はあなた達のことも歴史から抹消されている頃だと思いますよ?」

「そんな・・・馬鹿な・・・・」

パイトーンは力なく地面にうなだれた。
そう。全ての作戦は自分を中心に動いていると思っていた。
だが、実際、自分はシルフィリアの手の上でいいように踊らされていたのにすぎなかったのだ。
最初から最後まで・・・全部・・・・・
どうやら自分達は絶対に敵に回してはいけない人物を敵にしてしまったらしい・・。
だが・・・

「一つ・・教えてくれないか?」

パイトーンは静かな口調でシルフィリアに問う。

「なんでしょう?」

「あなたは玉座の間でこう言った。『この世界から永久に戦争を失くす』と・・・本当にそれが出来ると思っているのか?」

「聞いてたんですか?」と短くシルフィリアは苦笑いしてから

「・・・えぇ・・私は本気ですよ。」

とシルフィリアが応える。

「なら、その方法を教えてくれ。どうしたらそんな夢のようなことができる?」

「簡単なことですよ・・・。知っての通り、私は改造手術を受けて人間の体にエルフと精霊の血が流れています。つまり、私の寿命もまた半永久的なんですよ。誰かに殺されない限り・・私は死にません。」

「・・・・・・」

「さて、あなたに一つ質問をしましょう。現在この世界には大きな3つの国があります。その3つのうち例えばスペリオル聖王国にあなたは今回の数倍の兵士を連れて侵攻しなければなりません。しかし、スペリオル聖王国には絶対に勝てない敵がいます。さあ、どうしますか?」
「絶対に勝てない敵?」

「そう、何があろうと・・どんな反則を使おうとも圧倒的な力でねじ伏せられる敵。その人がいる以上、絶対に越えられない壁。もしそれが敵軍に居れば・・あなたはどうします。」
「・・・・・・・」
「おそらく侵攻は止めるでしょう。そしてその世界においてスペリオル聖王国が盟主となって『戦争が起きた時には我が軍の兵を介入させ、戦争を強制的に終戦させる』的な条約を一方的に締結させる。そうすれば誰もスペリオル聖王国に逆らう人間はいない。なにしろ“絶対に勝てない敵”という脅威がそこにあるのですから・・。力が均衡してるからこそ戦争は起きるのです。ならば、その均衡を圧倒的に崩せば戦争は起きない。それが私の考える戦争を失くす方法です。」
「・・・・・・なるほど・・・」

パイトーンは静かに頷いた。

「それだけの魔力。それだけの力。さらに7万の軍勢を退け、改良型ラズラヒールを4回に渡り使い、ニーベルングの指輪で召喚した戦乙女をすべて倒し、さらに屋敷の方の敵も殲滅させ、今私の前で悠々と演説できる程の力を余しているとなれば・・。その力があれば・・・」
「ええ・・・・」
シルフィリアは優しく頷いた。

「私が“絶対に勝てない敵”になって一国に永久的に仕える。それによって世界を平定します。」

「傲慢だな。」
「例えそれでも・・・・それが力を持った人間の責務だと思いますから・・・。戦争にルールはありません。この方法も十分に有意義な解決法だと思いますよ?」
「なるほど・・・確かに・・・な・・・」
パイトーンはあきらめたように地面に伏せた。
まるで頭を垂れ、土下座でもするような格好だ。

シルフィリアが緩やかなしぐさで背中を向け代わりにデュラハンが一番前に出た
「パイトーン。お前のしたことは国家反逆罪に当たる。この行為に対し、私、デュラハン=フォト=バース=スペリオルの名の元に刑法を適応し、お前から貴族の地位を剥奪。家の取り潰しと、財産の没収。そしてお前に対し、国外追放を申しつける。覚悟はよいな。」
「・・・・・・・」
パイトーンは何も答えない。
どうやら観念したようだ。

シルフィリアはそれを見届けるとアリエスに対し、「帰りましょうか?」と耳打ちした。
屋敷の片付けもしなければならない。それに屋敷に遊びに来てくれていた皆様(子供達)には怖い目に合わせたお詫びをしなくては・・・・・・・魔術祭も台無しにしてしまった。
今後しばらく忙しくなりそうだ。


―フェフェフェ―

パイトーンが静かに笑いだした。

「・・さえ・・け・ば・・・・」
「何か言ったか?」
パイトーンに縄を掛けようとしたカーリアンが聞き返す。
「お前さえいなければ・・・・」
鬼の形相をしたパイトーンが顔を上げ、勢いよく立ちあがった。
「お前さえいなければ!!!!!」
「なっ!?」
立ち上がったパイトーンは油断していたカーリアンの腰からレイピアを抜いてそれを突き立て一気にシルフィリアにむかって突進した。
シルフィリアとアリエスの目が驚愕に染まる。
まずい・・・油断しきっていた。
これは・・・
避けきれない。
それでもシルフィリアは胸元からエクスレーヴァを取り出そうとするが圧倒的に必死になったパイトーンの方が早い。

だめだ・・殺られる!
こんな簡単に・・・あっけなく・・・皮肉なモノだ。計画を話した次の瞬間にやられるなんて・・・・

シルフィリアが死を覚悟したその時・・・・
綺麗なオレンジの髪が揺れた。

―キンッ!―
 
ヒヒイロカネ同士がぶつかり合う独特な音が響いた。
 「ぐっ!!」
 レイピアの刺突がミーティアの脇腹を直撃した。
 だがそこから血液が流れ出ることは無い。
 むしろダメージを受けたのはレイピアのほうだった。
レイピアが折れた。
 撓(しな)ったレイピアは中腹から―パキンッ!!―という音を立てて真っ二つに折れ刃先が地面に落ちる。
 何故・・・・
 シルフィリアがミーティアを見つめる。
 そうか・・・・
 「ベストラ・・・」
 シルフィリアが自分の貸したローブの名前をそっと呟いた。
 なるほど・・絶対防御のローブ。
 一瞬ミーティアを殺してしまったと思っていたシルフィリアは安堵の溜息をつく。
 「な!なんだと!?」
 折れたレイピアにパイトーンがひるんだ。

「確かに・・・シルフィリア様は存在してはならない存在なのかもしれない・・・」

 その一瞬をミーティアは見逃さない。

 「でも、それを決めるのは・・・・」

 回し蹴りをして体勢を崩した隙に腰からエアナイフを抜いてパイトーンの腕と足をそれぞれ斬りつける。

「お前じゃない・・・」

 「あああああああああああああああ!!!!」
 悲鳴が轟きわたった。
 そのパイトーンを後ろからカーリアンが押さえつける。
「よくやりましたねミーティア様。お手柄ですよ!!」
パイトーンの両手を後手に縛ってカーリアンは笑顔を浮かべた。
ミーティアは大きく深呼吸してから、落ち着いたように貫頭衣の腰へとエアナイフを戻す。
「ありがとうございました。」
シルフィリアに礼を言われて初めて自分が口走ったことを実感した。シルフィリアは存在してはならない存在・・・
そんなことはないはずだ・・・・
生きているなら・・・善の心さえ持っているなら・・・・
それだけでその人には価値がある・・・。
なのに、何であんなことを言ったのだろう。
多分、心のどこかで彼女を羨んでいたのだろう。
自分より綺麗で、自分より可愛くて、自分より強くて、自分より優秀で、自分の持っていないアリエスのような存在を持つ彼女を・・・
なんてあさましいんだろう・・・笑ってしまう。
でも・・
それをミーティアは恥とは思わなかった。
人それぞれの思いがある。人それぞれの感情がある。
人の考えなんか十人十色・・・それでいいじゃないか・・・
それに・・・
今は自分がしたことが信じられなかったからというのもある。
よくよく考えたからなんであんなことができたのだろう。
もしベストラが貫かれていたら自分は即死だったと言うのに・・・
そう考えるといきなり体が震えてきた。
ベストラを脱いでシルフィリアに返そうとするもその時も手を足はガクガク震えている。
思えば初めての本当に命をかけたやりとりだったのだ。
シルフィリアはその手からローブを受け取り軽く振って身に纏う。
そして・・・・
ミーティアを優しく抱き締めた。
「ありがとうございました。御蔭で助かりました。」
少しずつミーティアの心を罪悪感が襲う。
「ごめんなさい・・。あんなこと言っちゃって・・・」
シルフィリア様・・彼女が存在してはいけないはずなんて無い・・。
こんなに柔らかくて・・・こんなに暖かい人が・・・・悪い人間なはずなんてないのに・・・・
「気にする必要なんてありません・・・。そんなことより、何かお礼をしなければなりませんね。何でも叶えましょう。あなたの願いを・・・」
こんなに優しい人が・・・悪い人間であるはずが・・・
「ミーティア様?」
シルフィリアの言葉でミーティアは悪いと思いながらも願い事を思考した。
今の一番のミーティアの願いとしてはセレナとシルフィリアが仲良くなってくれるのが一番いいのだが・・・・
 どうにもそれは難しそうだ。
 なにしろ、あれほどの出来事があったのだ。許せと言われても無理だろう。
 なら・・・・
 「お姉ちゃんのこと・・・名前で呼んであげて・・・・」
 それが一番の近道だろう。友人になる最初の一歩は相手の目を見て名前を呼び合うことから始まると思う・・。エルフという種族で呼ぶのではなくてちゃんとセレナと名前で呼ぶ。
 まずはそこからだ。
 そして、
「それから、一回ちゃんと話をして・・・2人きりでお茶でもしながらゆっくり・・・」
まず話さなければなにも始まらない。
2人とも人間では無いがそれでも人だ。
言葉ありき・・・
うん・・それが一番大事だと思う。

発生から9時間27分15秒。
事件が解決し、すべてが終わったその地を美しい朝日が照らしていた。



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